野川神明社(野川)

韋駄天を祀り近年はランナーのパワースポット

2012-1野川神明社1.神輿が来た 
 2010年10月9日は日曜日、小春日和の穏やかな午前、11時頃に俄かに窓の外が騒がしくなった。窓辺に寄る。ここ二階から眼下に見えるスーパーマーケットの専用駐車場に大勢の老若男女が犇めきあい、神輿の姿も見える。
例年、神輿の御旅所になる駐車場には、担ぎ手と同行者のほか周辺の住民の笑顔々々で溢れ返っていた。大人神輿と子供神輿の2基があった。御旅所で40分ほど休憩後、子供神輿はここで折り返して野川神明社に返り、大人神輿はさらに先に進み、町内を巡る。大人神輿が進む道の両側にはマンションや新築の一戸建て住宅が建て込む。18年前に当地へ引っ越してきた頃の私の週末の散歩ルートで、春は梅林の花の香に酔い、夏から秋にかけては野菜や梨畑の実りに目を楽しませたものだった。何年ぶりかに歩き、街並みの変化に驚かせられたが、少子化が謳われて久しい近年の日本において当地宮前区では過去5年間に1万人の人口増、その実態の一端を目の当たりにする思いだった。

2012-1野川神明社2.演芸の奉納と神輿の宮入り
 午後3時過ぎに野川神明社に出掛けた。普段の境内は森閑としているが、例大祭の前日の宵宮祭から、参道には20店以上露店が並んで様相を一変。参道は老若男女の参拝者で隙間もなく混雑。参道を進んで手水舎の前で左折して進み、階段を上がって本殿前の広場に出る。本殿左の神楽殿では、地元の有志による演歌・歌謡曲の喉自慢、また創作日本舞踊が披露される。神楽殿前には70席ほどの椅子が設えられ、高齢者も楽しそうに観賞、本殿にお参り後の参拝者も歌や踊りを見聞きして飽きない様子だ。
2012-1野川神明社 歌と舞踊のあと和楽会による勇壮な創作和太鼓が奉納された。神楽殿の幔幕に刺繍された稲穂模様を背景に演奏の和太鼓は、さながら秋の実りを祝い、かつて当地が田園地帯であったことを髣髴とさせた。
 午後5時に町内を巡幸してきた神輿が宮入りをし還御祭を斎行した。


2012-1野川神明社3.ランナーのパワースポット
 11月13日に訪ねた野川神明社には七五三を祝う親子連れの姿があった。
 野川神明社のように韋駄天を尊神とし神職が常勤している神社は日本全国でも極めて希少。
『新編武蔵風土記稿巻百三十村村里部、橘樹郡稲毛領上野川村、下野川村の条に《韋駄天社、村の艮(うしとら)の方にあり、上野川の内なり、内陣二間半四方拝殿四間に三間、南向なり、前に木の鳥居を建つ、総村の鎮守にて礼祭は年々九月二十三日、神具供免、畑一町余、見捨地あり》とある。』
韋駄天を韋駄天尊神として奉斎する野川神明社は、近年とみに盛んになった市民マラソンの選手、陸上競技選手、自転車競技選手等が篤い信仰を寄せるパワースポット。境内にはロードバイク用の駐輪場を完備。尻手黒川通りで競技用ヘルメット着用の自転車競技選手を時々見掛けるが、野川神明社を目指していたのだと常勤神職のお話で謎が解けた。奉納される絵馬には韋駄天が描かれ、マラソンの完走祈願、陸上競技の勝利祈願が目立つ。
野川神明社は、氏子、崇敬者の敬神の念篤く、正月初詣でには参拝者の長蛇の列ができる。本殿においては年明け直後の午前零時15分、1時、2時に新春一番特別祈祷を斎行しており、希望者は昇殿して厄除祈願等ができる。大晦日から元旦午前2時までお神酒や甘酒がふるまわれる。

宮前の風9号・2012.1 文・坪井喬)

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